闇よりも昏き想い
薄闇の中、廃墟と化した礼拝堂で仄かな月明かりに照らされながら、少女は祈りを捧げていた。
背後で聞こえた小石を踏み砕く音に、伏せていた瞼を押し上げ、そっと振り返る。
「誰・・・・?」
そこに立つのは、白磁の肌に漆黒の髪と瞳を持つ美しい青年。
まるで闇の化身の様だと、少女は声もなく青年を見つめた。
「こんな場所で何を祈る?」
心地よいテノールの声に背筋が震える。この声を知っている、なぜかそう思った。
「誰?」
「神に仕える女か。皮肉だな」
いつの間にか間近に迫っていた美貌に、少女は再び声を無くす。
細く長い指先がベールに触れ、一気にそれを剥ぎ取った。
薄闇の中、蜜茶色の髪が風に舞う。
「やっと・・・・・・」
最後の言葉は少女の耳に届く前に掻き消えた。
「んっ・・・・・・」
唇に柔らかな感触。口付けられているという状況に気付くまで、数秒の時を要した。
我に返り、押し返そうと抵抗するも、細身の体はびくともしない。更には強く抱きしめられ、身動きすら取れなくなった。
「やっ・・・・・・んっ」
執拗に繰り返される口付けは、まるで少女の存在を確かめているかのようで。次第に体の力が抜けていった。
漸く唇が解放された時には少女は潤んだ瞳で青年を睨む事しかできず。
背中のファスナーをゆっくりと下ろされても、抵抗できる力は残っていなかった。
真白の肌が月明かりに浮かび上がる。
青年は口の端を持ち上げ、白い首筋に顔を埋めた。強く吸い上げられ、少女の背が震える。
「やっ・・・・・」
「諦めろ。お前はもう、逃げられない」
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